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アセンティア・ホールディングス

【アジア新興国の外資規制の状況】

―シンガポール政府は外資導入に積極的だと思いますが、他のアジア新興国はどうですか?外資規制などが厳しいイメージがありますが。

 確かに、シンガポールでは小売業や飲食業が独資100%で進出できます。他の新興国は細かく外資系企業の持ち株比率が制限されています。

 ちなみにタイでは、外資系企業は49%までしか株は持てません。しかし、取引先の現地企業や自社の現地顧問弁護士事務所などに分散して残りの51%を持ってもらえば、会社を乗っ取られるなどのリスクはほとんど無くなります。しかもタイ政府も近年外資規制をどんどん緩めてきています。

 インドネシアの場合も同じく過半は持てません。インドネシア政府の場合は依然として外資規制は強固なままで、なかなか緩めてきませんね。

 マレーシアはだいぶ経済が発展しているので、外資規制もだいぶ緩くなっています。マレーシアでは確か資本金を2000万円ほど入れれば100%独資で事業ができるはずです。

 ベトナムも近年エコノミックニーズテスト(ベトナム版大規模小売り店舗法と呼ばれ、外資企業の2店目以降の出店審査)もゆるくなってきました。

―なるほど。ちなみに土屋さんはどのようにしてアジア新興国の状況を細かく把握しているのでしょうか?

 やはり足で稼ぐしかないですね。私は月に半分くらいはシンガポールにいて、日本にいるのは月に5日間くらいです。それ以外はマレーシア、タイ、ベトナムなどのアジア新興国を飛び回っています。

【ASEANで日本企業が成功するには】

―土屋さんが考えるASEANで成功する日本企業のポイントを教えてください。

 まず経営者の方自身が本気かどうか。そして想いを持っているかどうかです。「この国で絶対成功するぞ」という強い覚悟と熱い想い。また経営者自身がその国のことを心底好きでなければいけません。経営者の方が、その国のことをそこまで好きでない場合はどれだけビジネスチャンスがあってもやめておいた方がいいでしょう。うまくいかないと思います。私は、ビジネスというのは最後は理性ではなく、感性で決まると思います。海外でビジネスをすると本当にいろんな問題が起こります。それでもめげずにやり続けるだけの覚悟が大事なんです。

 また、ASEAN進出において、きちんと戦略を持っているかということも大事だと思います。「日本のマーケットが縮小して厳しいので、とりあえずアジアに出よう」ではうまくいきません。海外進出1店舗目はシンガポールに出店して、その後どの国をどのように進出していくのか。こういったシナリオをきちんと持っていないといけません。
ちなみに私は日本での会社規模はそこまで重要だとは考えていません。私の支援している会社さんでも日本で10店舗くらいの規模の会社さんは多いです。讃岐うどん「たも屋」さんは日本で四国を中心に15店舗の規模ですが、シンガポールですでに2店舗目をオープンさせました。沖縄で居酒屋を12店舗経営している「みたのクリエイト」さんは東京に出店するのではなく、いきなり海外に出ました。いまタイと香港に出店しています。

 つまり大事なのは強い覚悟と熱い想い、そして明確な戦略です。

―中小企業でもアジアで成功できるわけですね。ちなみにいくつかの新興国に出店するとなると味などのローカライズの問題が出てくると思うのですが、そこはどうお考えですか?

 私はローカライズには否定的ですね。もちろんイスラム教などのハラルの問題で使えない食材などはありますが、現地の人たちに合わせて日本食を特にローカライズする必要はないと思います。

 私はみなさんに「日本の本物の味をそのまま持って行きましょう」とアドバイスしています。世界一味にうるさいと言われている日本人の舌を満足させた本物の味で、そのまま勝負してもらいたいんです。いままでASEANでは、日本人でない国の人が経営する日本料理屋さんが多く、味も日本で食べる日本食とは違って、あまり美味しくないお店も数多くありました。

 しかしアジア新興国の人たちも日本に観光で来るようになり、日本食の本当の味を知る人が多くなりました。だから、本物の日本食の味をそのままASEANに持って行けば、味の違いが分かる人がいて彼らに歓迎されるんです。時代は変わってきています。今がチャンスです。

【FCビジネスは日本経済復活の切り札だ】

―最後に今後の御社のビジョンを教えてください。

 私は日本のFCビジネスに大いに可能性を感じています。日本では素晴らしいFC本部さんがたくさんあります。彼らとともに世界で一緒に挑戦していきたい。

 世界最大の経済大国であるアメリカは3つの知識産業を持って、世界から莫大な利益を得ています。1つが金融産業。シティ・グループやJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスなどの巨大金融企業が世界の金融をおさえてアメリカに莫大な富をもたらしています。

 2つ目がIT産業。グーグルやマイクロソフトなどの巨大IT企業が世界のIT業界を常にリードし続け、世界のITインフラを提供しています。

 そして3つ目がFC産業なんです。スターバックスやマクドナルド、コカコーラ、ケンタッキーなどの巨大FCが世界中に店舗を展開して、ロイヤリティなどの莫大な権利収入をアメリカにもたらしています。

 私は日本経済の復活のカギとして、もっと積極的に日本のFCが世界に出ていくべきだと考えています。金融産業やIT産業はすでにアメリカに追いつくのは厳しいと思います。しかし3つ目のFC産業に関しては、日本もまだまだチャンスがあると私は考えています。もっと日本が一丸となってオールジャパンで戦えば、日本のFCは間違いなく世界に広がっていく。日本のFCはオペレーションの質も高く、提供するサービスの品質も高い。あとは挑戦するだけです。これからも強い覚悟と熱い想い、そして明確な戦略を持って日本のFC本部さんの海外進出の支援を続けていきたいと思います。

プロフィール

1965年、兵庫県生まれ。1991年にコンサルティング会社に入社。1995年、株式会社プライム・リンクを設立し、代表取締役社長に就任。2001年に同社が株式上場を果たす。2006年に株式会社アセンティア・ホールディングスを設立し、代表取締役社長に就任。著書に『アジアで飲食ビジネス・チャンスをつかめ!』がある。2012年よりJETROのサービス産業分野の海外進出コーディネーターを務めている。

企業情報

設立 2006年8月
事業内容 飲食業とフランチャイズビジネスの海外展開サポート
URL http://www.assentia-hd.com/en