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なんのために商売をやるのかを、いつも自分の芯におけ

―日本マクドナルドが減収減益を続けるなか、なぜ御社は2014年3月期に増収増益を果たせたのですか。

 まず早朝時間帯の強化が奏功しました。以前から兆候はありましたが、東日本大震災のつらい経験を経て、早寝早起きの生活を志向する人が増えてきたようです。

 そうした人たちに朝食のインフラを提供するため、2012年3月には朝7時からの営業店舗を増やし、朝専用メニューも導入。2013年9月末には約800店舗に拡大し、2014年4月からは全店舗(一部店舗除く)で実施しています。

 ここでのポイントはマーケットインの発想。お客さまが求めていることを徹底的に考えると、お店のたたずまいや店員との関係性など、さまざまな要素が大切だとわかります。いい商品をおいて値段を下げるだけでは、コンビニや家庭料理に勝てません。

―単に営業時間やメニューを変更するのではなく、顧客が店舗ですごす意味を考えているわけですね。

 そのほかにも、ブランド力を向上させるための活動が業績を支えました。

 具体的には全国各地でタウンミーティングを開催し、お客さまに当社の取り組みをお伝えしています。株主の方とは懇談会や説明会、農業生産者の方とは「HATAKEミーティング」と名づけた対話の場をつくっています。

 もちろん、社内コミュニケーションも重要。ランチの際には、私の部屋で社員5人と忌憚のない話をする機会を設けています。昨年度は24回ほど開催し、一人ひとりの社員にメッセージを伝えてきました。

 ブランド力が下がるのは一瞬ですが、上げるには地道な努力が必要。時間も手間もかかりますが、対面のアナログ的手法が大切なんです。

―創業者の櫻田慧さんから影響を受けた経営哲学はありますか。

 私が21歳で入社したころから、何千回も口を酸っぱくして言われたことがあります。それは「なんのために商売をやるのかをいつも自分の芯におけ。それがなく戦術や戦略に走れば、必ず右往左往する」という大原則です。当社の目標は、食を通じて人を幸せにすること。ですから、この実現こそが自分自身の喜びと思って仕事をしてきました。

 また、タライの話も印象に残っています。タライに水をはって、自分のほうに水を呼びこもうとすると指の間から逃げていく。でも、こちらから水を押すと返ってくるんですね。つまり、最初から得ようとせず、与えようとすると結果は返ってくる。だから欲望ではなく志をもった人間になれ、と薫陶を受けましたよ。

―20代のころから、そういった原理原則を理解していたのですか。

 いえ、最初は1割くらいしか理解できませんでした。歳を重ねて経験を積むなかで、少しずつ身にしみていきましたね。

 そのなかで人柄の大切さも説かれました。「正しいことを言っても嫌われるような人間にはなるな。あなたの話を聞きたいと思われる人間になれ」と。いまは素直で謙虚な人柄こそ、経営者に不可欠な条件だと実感しています。