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現地に深く入り込んで、受け皿の有無を確かめよ

―235店舗(2014年6月末現在)の台湾を筆頭に、モスバーガーは積極的なアジア展開を進めています。日本企業の進出に適した国や地域はありますか。

 市場のポテンシャルを評価すれば新興国ですが、業種・業態によって違うでしょうね。肝心なのは、GDP、宗教、言語、食文化、業界構造といった基本情報を調べたうえで、経営層が現地に行くことです。

 新しい市場を切り拓くときは、その国に永住するくらいの覚悟をもたなければ成功できません。私は5年間台湾に住んで現地の人とかかわり、モスバーガーの受け皿があるかどうかを肌で確かめながら、毎日をすごしていました。調査報告書をいくら読んでも書いていないことが、現場にはたくさん転がっていますから。

―アジア各国に展開していくうえで、企業が変えてはいけない点と変えるべき点を教えてください。

 絶対に変えてはいけないものは経営哲学。一方、戦略や戦術は現地の実情に合わせて変えるべきでしょう。たとえば、台湾では「モスチキン」を非常にスパイシーにしました。世界中で同じ商品を展開するチェーンもありますが、それは戦略の違い。優劣はありません。

 また、人材のマネジメント手法も変化させます。たとえば集団主義の日本に対して、中国は個人主義が強い。一人ひとりのエネルギーを企業成長に結びつけるには、そのマインドを押さえつけずに評価すべきです。

 しかしながら、日本では誤った個人主義が台頭している気がします。欧米型の制度を表面的にとりいれてもうまくいきません。個人の成果よりもチームで力を合わせたプロセスを評価して、集団主義の強みを活かしたほうがいいでしょう。

―最後に、業績低迷に悩む中小・ベンチャー企業の経営者にアドバイスをお願いします。

 すべては1対1から始まります。5人の会社でも1,000人の会社でも、まずは社員と1対1のコミュニケーションを増やすことが大切です。そこをおろそかにして社長が大勢の前で話しても、肝心なことは伝わりません。相互理解のインフラがなければ、メッセージは届かないのです。

 これには非常に多くのエネルギーが必要ですが、手間を惜しまず努力してほしい。互いに理解しあえる企業文化をつくれば、その先に成長があるはずです。

プロフィール

櫻田 厚(さくらだ あつし)
1951年、東京都生まれ。広告代理店に入社後、1972年に叔父である創業者・櫻田慧氏の誘いで「モスバーガー」創業に参画。1977年に株式会社モスフードサービスに入社。直営店の勤務を経た後、教育・店舗開発・営業職を経験。1990年に海外事業部長として台湾に赴任し、同社アジア展開の礎を築く。1994年に取締役、1998年に代表取締役社長に就任。2014年4月より会長職を兼任。そのほかに一般社団法人日本フードサービス協会会長も務める。

企業情報

設立 1972年7月
資本金 114億1,284万円(2014年3月末現在)
従業員数 1,250人(2014年3月現在)
事業内容 フランチャイズチェーンによるハンバーガー専門店「モスバーガー」の全国展開、その他飲食事業など
URL http://mos.jp/