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【インタビュー後編】 現在は良いベンチャーが生まれるチャンス

【インタビュー後編】 現在は良いベンチャーが生まれるチャンス

―なぜ日本のベンチャーは世界を目指さないのでしょうか?

 日本のマーケットはそれなりに大きく、成熟しており、ベンチャーが新しいことをやろうと思っても既に日本の大企業が隅々まで手がけている。だから、大企業の下請け的な仕事でもそれなりの規模を実現することができました。閉塞感はあったものの、それに甘んじていたとも言えると思います。

 そんな状況下、ビジネスの隙間が唯一あったのがIT分野ですが、残念ながら日本からはグーグルもアマゾンもイーベイも生まれなかった。日本からIT分野で世界的ベンチャーは生まれなかった。独自のビジネスモデルというよりも、既に存在するアメリカのモデルを持ってくることでビジネスが成立してしまっている。だから、アメリカに進出しようなんて思わない。

 原因のひとつは、日本人の発想が製造業に偏りすぎたこともあると思います。アメリカと比べて、日本にはコンピューターサイエンスのトップを目指す人材が少なかった。確かに製造業は日本の核となる産業であり、大変重要です。しかし、日本の教育は幅広く時代の変化に対応して、様々なエリアの優秀な人材を供給する仕組みを作る必要性があるんです。

―2008年度はIPO(株式上場)を果たす企業が前年度よりも減少し、2000年以降では最少になると予想されています。ベンチャー熱も冷めてきているようですが、この状況をどう考えますか。

 20世紀は製造業の時代でした。自動車業界や半導体業界は新規の参入障壁が非常に高い。それに対し、IT分野は参入障壁が非常に低い。しかし、この参入障壁の低さが、逆にどこも似たり寄ったりのベンチャーが乱立し、オリジナリティーを出しにくくしてしまっている。

 また、アメリカに端を発する金融工学とITの結びつきは、実体経済から乖離した金融の暴走を生んでしまった。そして参入障壁の低さから、それに乗っかったビジネスはここにきて行き詰まっています。こうした事情から新興市場は一気に冷え込んでしまったと思います。

 でもベンチャー熱が冷めた現在の状況は、良いベンチャーが生まれるチャンスでもあります。マスコミも投資家もみんな平静を取り戻しました。金融危機を発端とした経済の混乱さえ収まれば、バランスのとれた新しいベンチャーが日本に生まれてくる下地は整うはずです。

―最後に、若者へメッセージをお願いします。

 自分は何が好きで、何がやりたいのか。どんな人になりたいのか。そこを徹底的に突き詰めてほしい。そうやって常に“気づき”を求めていれば、今まで何とも思っていなかった情報さえも自分の中で活きてくるはずです。起業したいのであれば、世の中の役に立つことをしてほしい。お金儲けを目的にするのではなく、社会への価値提供をまず第一に考えてほしい。お金が儲かるのは、あくまで結果ですから。お金儲け以外の自分を突き動かす強い想いが無ければ、起業しても成功はできないでしょう。

 また、私は「成功の定義」にも少し疑問を感じています。会社をIPOさせて、まとまったお金が入ってきたら成功なのか。お金を集める意義は、手にしたお金を元に次の価値を創るチャレンジをすることだと思います。起業家ならば、ベンチャーならば、チャレンジし続けてほしい。

 アップルCEOのスティーブ・ジョブズも同じことを言っていますが、人間はハングリー精神を無くしたら終わりだと思います。私もこの歳になると「ゼロから起業して、会社経営するなんてスゴイですね」と言われますが、じゃあ引退して、毎日ゴルフでもしてろって言うのかと(笑)。それもひとつの生き方ですが、私はハングリー精神を持って、新しい仕事に挑戦している方が楽しいんです。一生、挑戦し続けていたい。

 そして若い人には、もっと「夢」と「ハングリー精神」と「謙虚さ」を持ってほしい。3つ全てを持てと言われても難しいかもしれませんが、3つの内どれか1つでもいいから持ってほしいですね。

プロフィール

出井 伸之(いでい のぶゆき)
1937年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、1960年にソニー株式会社に入社。外国部に配属され、1968年にソニー・フランス設立に従事。オーディオ事業本部長、取締役を経て、1995年から2005年まで社長、会長兼グループCEOを勤める。2006年にクオンタムリープ株式会社を設立し、代表取締役に就任。2003年から2007年まで日本経団連副会長も務める。現在はソニー株式会社アドバイザリーボード議長、他にアクセンチュア株式会社、百度株式会社、フリービット株式会社の社外取締役なども務める。

企業情報

設立 2006年4月
資本金 100,000,000円
URL http://qxl.jp/