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エステー株式会社

商品ではなく お客さまをつくっている

―商品開発において「グローバル・ニッチ・No.1」を掲げています。どうやって世界トップシェアの商品を生み出しているのですか。

 市場を定めて、新商品を生み出し、固定客をつくっています。エステーは「消臭ポット」や「脱臭炭」をつくっているのではなく、お客さまをつくっている。そのために戦う市場を選びます。
 いくら私が大ボラを吹いても、当社は年商約500億円の中堅企業です。それに対して、国内最大の同業者である花王さんは約1.4兆円、世界最大の同業者P&Gさんは約10兆円。こんなライバルとまともに戦ったら、まずやられてしまいます。だから、大手の参入しにくい市場をねらいます。たとえるならメダカがいる池に入って、それをエサにして小さな池のクジラになるようなイメージです。
 そこに革新的な商品を開発して投入します。なにが当たるなんてわからないので、昔から開発やマーケティングの社員と飲んで「こんなものをつくれ」とよく居酒屋で話していましたね。

―「絞りこみと集中」という戦略で大企業と勝負しているのですね。そこで勝つために重要なポイントはなんでしょうか。

 損切りです。とにかく見切らないと命取りになります。勘をきかせて、危険な場所に行かない。ヤバいと思ったら、すぐに逃げる。役員会で「必ずこれをやれ」といったことを翌週には撤回することだって必要です。
 この間も怒られたね、「引き返し不能でございます」なんて。「引き返し不能っていったって、オレが逃げろというんだから逃げろ。こないだ『まだまだいける』っていったのは、オレと同じ名前と顔の別人だ」なんて、とぼけて返したんだけど(笑)。
 ときには、売れている絶頂期に撤退することもあります。新型インフルエンザが大流行していたときのこと。マスクが飛ぶように売れました。増産につぐ増産。そのときに「これは危ないな」と。それですぐ「撤退しろ」と命令したんです。社員は猛反対でしたよ。でも、すぐにインフルエンザ禍は終息。マスクの大量返品で苦しむ会社が続出するなか、当社は無傷ですんだんです。

事業部ごとにトップをつくり 後継者を育てていく

―鈴木さんは80歳になります。後継者育成については、どんな手を打っていますか。

 事業部ごとのトップを何人もつくっていく方針を立てています。そのなかから、後継者が出てくればいいと。
 カリスマ経営者なんて、育成しようと思ったってできやしないんですよ。もしいたら、もう寝首をかかれて、そいつがトップになっていますよ(笑)。それよりも小さなトップをたくさんつくったほうがいい。

「すべては自分の責任だ」 なんて考えなくてもいい

―それはなぜでしょう。

 マイクロバス1台分くらいの小さな組織がちょうどいいからです。「小さい会社は不利」という常識は間違い。経営資源は少ないですが、スピードがあって有利なんです。ただ、エステーは分割できないから、事業部にしようと。事業部長に全権を委任して、そのなかから力量のある人を社長にします。これまでに4つをつくりました。2015年4月から9つの事業部で動きだします。

―最後に、中堅・中小企業の経営者へアドバイスをお願いします。

 あまり思いつめずに、ニコニコしてください。そうすれば、たいていなんとかなります。たかがビジネス、命までとられるようなことはありません。肝っ玉を太くして、なんとかなると思っていたほうがいいですよ。
 事業にはいいときも悪いときもあります。悪いときにシケた顔をしていたら、ツキもやってこない。逆にうまくいったからといって調子に乗らないほうがいいですな。
 やれ不景気だ、円安だと顔をしかめていてもしょうがない。そのうち次の案がでてくることもあれば、再び円高になって解決することもあるんですよ。短絡的に見て泣いたり怒ったりしないほうがいいですよ。心がリラックスした状態でないと、適切な経営判断はできませんから。
 それから、あまり自分のせいにしすぎるのもいけません。社長はよく「すべては自分の責任だ」と思いつめてしまう。そんなプレッシャーをしょっちゅう感じてたら、つぶれちゃいますよ。

プロフィール

1935年、東京都生まれ。家業の日用品ディスカウンターの仕事を戦後間もない小学生のころから手伝う。1959年に一橋大学を卒業後、日本生命保険相互会社に入社。40代で法人営業部門を立ち上げ、年間契約高1兆円以上のトップセールスマンとして活躍。1985年にエステー化学株式会社(現:エステー株式会社)に出向し、1998年に代表取締役社長に就任。バブル期の負の遺産を処分し、「消臭力」をはじめとする商品開発によってヒットを連発。2012年より代表執行役会長を務める。

企業情報

設立 1948年8月
資本金 70億6,550万円
売上高 469億9,200万円(2014年3月期:連結)
従業員数 760名(2014年3月31日現在:連結/パートタイマー・嘱託を除く)
事業内容 エアケア(消臭芳香剤・脱臭剤)、衣類ケア(防虫剤)、湿気ケア(除湿剤)、ハンドケア(手袋)、サーモケア(使いすてカイロ)、ホームケア(クリーナー・その他)など、家庭用品の製造・販売
URL http://www.st-c.co.jp/