japan-business-headline

株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)

【インタビュー後編】 商売は信用が第一

―経営の原理原則とは何ですか。

経営は信用が全てです。あとは自分自身で実際に経営してみて原理原則を見つけていくものだと思います。まずは自分で全部やってみないと分かりません。

また商売では甘い考えは通用しません。まず商品を買いに来るお客さんは非常にシビアです。自分のお金を商品と交換するわけですから、とても厳しい目で見てくる。またその店で働く従業員もシビアです。自分の大事な時間を使って、お金をもらいにくるわけですから、これもまた厳しい目で見てきます。そんな中、経営者は誰にでも納得できる形で経営しないといけない。

でも最初からうまくはいきません。何回も失敗してみて、失敗の原因が自分の中にあるんじゃないかと気付かないといけない。そうやって、自分を成長させていくんです。

―柳井さんも失敗をしてきたんですか。

いつも失敗の連続ですよ(笑)。商売に関して言えば、一勝九敗くらいです。ほとんど失敗してる。新しいことを始めて、成功する確率は、ほとんどゼロに近い。だから僕は失敗しても会社が潰れないようにすることをいつも考えてきました。会社を潰したら、従業員や取引先に取り返しのつかない迷惑をかけます。だからまずは会社を潰さないことを考える。それが商売の信用につながると思います。

―人から信用されるために他に大事なことはありますか。

やっぱり一貫してやることが大事です。コロコロと意見を変えたり、昨日言ったことと今日言ったことが違う人を誰も信用しません。だから自分で言ったことは、必ず実践する。そういう一貫性が大事だと思います。

他には約束を守ることも大事です。うちの会社では、会議はだいたい5分前から始めます。5分前にはみんな集まっているから、会議が始められるんです。会議に遅れてくる人は、僕は大嫌いです。

―柳井さんが経営者として、いちばん辛いことは何ですか。

やっぱり社員に辞められる時ですね。社員から「ちょっと話があるんですけど」って言われると、今でもギクッとしますね。会社に入って、一緒に仕事をしていた仲間が辞めていく。特に経営トップである僕を見限って辞めていく。これは本当に辛いし、寂しいことです。経営者として、自分は失格なんじゃないかと悩みます。

―また経営者に必要な素質とは何ですか。

特に素質は必要ないと思います。僕はほとんどの人が起業できると思っています。大事なのは、まずは全部自分でやってみること。そこで何回も失敗して、また懲りずに挑戦する。その繰り返しの中で経営者として育っていくんです。

うちの親父が偉いなと思えるのは、全てを20代の若造の僕に任せたことです。「お前が好きなようにやれ」って、全部の責任を任せた。それで僕は商売が好きになったんです。商売ってこんなに面白いのかと。自分でも結構うまくやっていけるじゃないかと。そして自信も付いた。

商売というのは総合的な芸術作品みたいなものです。人もいれば、お金もある。ある意味では人生の縮図です。いろんなものが詰まっている。しかも、うまくやれば儲かる。こんなに面白いものはありません。大学時代に熱中した麻雀より面白かった(笑)。

―話は変わりますが、起業家を目指す若者についてどう思いますか。

僕はベンチャービジネスをやろうって人が嫌いなんですよ。ベンチャーをやろうっていう人は、人を測る尺度がお金な感じがして嫌いなんです。どこかプンプンとお金の匂いがする。お金の匂いのする人に、あまりいい人はいません。

起業家を目指すんだったら、まず会社を興すことを考えるんじゃなくて、一生自分がやり続けられることを見つけるのが大切です。また、やると決めたら、とことんやる。日本のベンチャー企業は規模が比較的小さい。何十億とか何百億とかでは満足せずに、行き着くところまで行こうっていう風に思ってほしい。

20代や30代でたまたま運良く上場して、キャピタルゲインで儲けても全く意味がない。そんなものに存在価値なんてないし、評価に値しないと思う。そういう人にはなって欲しくないです。

また起業しようとする時に、テクニックに走って、MBAのビジネススクールに通ったり、欧米の経営学者の書いた本を読み漁るのも良くない。そういう本を読む前に、本田宗一郎や松下幸之助のような偉大な経営者の本を読んだ方がよっぽどいい。経営の本質、ビジネスの本質、社会の本質がその中に書いてある。本当に勉強になると思います。

―会社を興すことばかり考えずに、まずは自分が何をしたいのかを真剣に考えるべきだということですね。

そう、まずは使命感を持ってやれることを探して欲しい。起業するというのは、とても責任が重大です。だから安易に考えるのではなく、20代で起業しても、それが40代、50代まで続けることができるかどうか。ただ単に金儲けが目的だと継続していくことはできません。自分が主体的になって、使命感を持って起業する。そうすれば、商売に対する誠実さや職業的良心が芽生え、人に信用される基盤ができると思います。

それと日本ではもっと若い人が商売や経営の表舞台に出て、企業のトップとして活躍するべきです。今の日本経済を見ていたら、老害が出てきていると思います。日本では老人が頑張りすぎですよ。逆を言えば、若い人が頑張っていない。もっと若い人が頑張らないといけない。現在の日本はすごいピンチな状態です。だからこそ、若い人にとってはチャンスなんです。若い人には日本を変えるような新しい産業を興してほしいです。

ビジネスチャンスはいくらでもあります。自分で商売をしてみて、自分の可能性を自分で開発してもらいたい。商売をするのは早ければ早いほどいい。サラリーマンよりも自分で商売した方がいいですよ。絶対に。

―なぜサラリーマンよりも、自分で商売をした方がいいんですか。

商売人は自由でしょ。もちろんその代わり大きな責任を負いますが。うちの親父が言っていたんですが、「商売人は自由だ。自分でトイレに行きたい時に、自分で勝手にトイレに行ける。だから商売人の方がいいよ」って(笑)。リスクはありますが、自由がある方が僕はいいと思います。

―最後に、これから実家の会社を継ぐ人にアドバイスを下さい。

大事なのは、親の言う通りにしないこと。親の言う通りにやったら、絶対に成功しない。親の言うことは昔のことばかり。自分で考え、反対のことをやらないと、未来には生き残れません。

親父はユニクロの多店舗展開には、決まって反対した。「何でこんな危ないことをするのか。リスクを取って、ゼロになったらどうするんだ。まぁまぁの生活ができるんだから、これでいいじゃないか」と。親心なんです。親父は金の辛さが身に沁みていたんでしょう。だからいつもカネカネだった。うちの親父は家業だった。家族のこと、個人のことしか考えていなかった。従業員との関係も親分子分。

僕はそんな考えに反発して、全国展開を目指し、きちんとした経営をしたかった。だから親の会社を継ぐときは、まず自分に全てを任せてもらえるかどうか、そこが大事。任してもらえるんだったら継いだらいい。任せてもらえないんだったら、自分で起業しなさいと僕は言いたい。

プロフィール

柳井 正(やない ただし)
1949年2月、山口県宇部市生まれ。1971年に早稲田大学政治経済学部を卒業し、ジャスコに入社。翌年、父親の経営する小郡商事に入社。1984年6月に社長に就任する。また第一号店を広島市に出店し、「ユニクロ」という店名でカジュアル小売業に進出。1991年、社名をファーストリテイリングに変更。94年には広島証券取引所に上場し、97年東証2部に上場。99年2月には東証一部に上場を果たした。

企業情報

設立 1963年5月
資本金 102億7,395万円
従業員数 30,448名(2014年8月31日現在)
URL http://www.fastretailing.com/jp/