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【インタビュー中編】 小倉昌男の次なる挑戦

【インタビュー中編】 小倉昌男の次なる挑戦

―宅急便創業の経緯を教えて下さい。

父は戦前の成功体験にしがみついていて、「長距離大量輸送は国鉄の分野だからトラック輸送は近距離少量貨物に限るべきだ。」と信じ込んでいました。

ところが、道路が広がりトラックの性能が上がるにつれ、トラックによる大量輸送が可能になったのです。そしてヤマト運輸は長距離大量輸送という時代の波に乗り遅れて、経営危機に陥ってしまいました。そこで私はこの経営状態をなんとか挽回しようと、宅急便を始めました。

当時、宅急便が経営挽回のもととなるかは見解の分かれるところでした。幹部や世間の人は宅急便で挽回するどころか、逆に赤字が増えて会社が潰れるのではないかと予想していました。しかし、私には儲かる自信があった。はじめは頭で考えたことだったんですが、やっていくうちに手応えを感じました。

儲かるためにはどうすればよいかということを常に理論的に検証しながら、宅急便を開発していったんです。現在でもヤマト運輸が増収増益を続けていられるのは宅急便のおかげです。宅急便事業を始めたことは決して間違っていませんでした。

―小倉さんの経営哲学はどのようなものなのでしょうか。

常に消費者の側に立ち、生産者中心の考え方はやめなさい、ということです。消費者中心の企業経営が大切です。消費者に支持されない企業は間違いなく潰れます。消費者に支持されるということを企業理念に掲げる会社、今の言葉で言えばCS(コンシューマーサティスファクション)経営をしている会社は、やはり成功してますよね。

―ヤマト福祉財団の事業についてお聞かせください。

障害者の福祉の仕事をしています。日本の障害者は恵まれない状況にあります。仕事も働き場も無い。したがって収入が無い。本当に月給1万円の世界です。だから障害者手当てが支給されるわけですが、お金があれば幸せか?というとそうではありません。みなさんも毎日が日曜日だと苦痛でしょう。人間には働きたいという基本的欲望があります。お金も欲しいけど、働くことによって自分の創造性が発揮できるんです。生きがいは、やはり働く場でしか達成できません。

私は、働く能力はあってもそれを発揮する場がないという障害者に働く場を作ってあげたいんです。つまり、ノーマライゼーションの世界にしたい。障害があろうとなかろうと関係なく「働く権利」を発揮できるような社会的仕組み、それがノーマライゼーションです。

世間では、「障害者が作ったから買って下さい」というのがよくありますが、それは逆に差別だと思います。べつに障害者であることを言う必要もない。障害者が働いていることを誰も気にしない世界を作りたいんです。

ところが、健常者が障害者に対して偏見を持っているからノーマライゼーションが進まない。障害者の能力が低いとか働く意欲がないといった偏見が多いんです。そんな誤解は初等教育の段階で無くさなければなりません。私はもう78歳で耳と足が悪いので、本当に障害者の一歩手前です。自分がそういう状態だから、障害者の気持ちがよく分かるんです。私の第二の人生は経営の世界ではなく、障害者の世界で過ごすつもりです。