「日本のファンをアジアで増やす」を旗印にシンガポールで奮闘している元電通マンの宮野氏。宮野氏が電通時代に仲間とともに仕掛けたアニメフェスティバル・アジア(AFA)は、今ではシンガポール、マレーシア、インドネシアの3か国で延べ16万人が参加する東南アジア最大級の日本のポップカルチャーイベントへと発展した。今回は電通を飛び出して今年に起業した宮野氏にアジアでのクールジャパンの現状について聞いた。(取材内容は2013年9月時点のもの)
【クールジャパンをアジアで広める】
―まず御社の事業内容を教えてください。
弊社は日本のアニメや映画、音楽などのクールジャパンのコンテンツをアジアで広めるお手伝いをしています。弊社がコンテンツビジネスのプラットフォームとなって、エンタメコンテンツを持っている日本企業のアジア進出のお手伝いをしているんです。
たとえばアニメフェスティバル・アジア(AFA)。このイベントは2008年当時、私が電通シンガポールに所属していた時に仲間とともに始めたイベントです。当時のアニメ好きのローカル社員ショーンチンとともに第一回は手探りで始めたのですが、3000人収容のシンガポールの会場があふれかえりました。2日間でなんと2万3000人もの人が押し掛けたんです。2回目の2009年には5万3000人、3回目の2010年には7万1000人、4年目の2011年には8万人を集客しました。また5回目の2012年にはシンガポールだけでなく、マレーシアやインドネシアでも開催するまでに大きくなりました。
他には「ライブビューイングジャパン」という日本のライブを生放送でアジアの映画館で体感
してもらうというイベントなども手掛けています。またイベントだけでなく、アジアにおけるタレントマネジメントや日本のテレビ番組や映画、小説などをアジアで販売する事業なども手掛けています。
―アジアでも日本のコンテンツは人気なんですね。。
人気ですね。しかしK-popなどに比べれば弱いですね。日本の人気アーティストでも、アジアではあまり知られていないのが現状です。私はこの現状を何とか変えたいんです。いままで日本のエンタメ系の人たちはあまりアジアに積極的に進出してきませんでした。
エンタメ業界は狭い業界なので、知り合い伝手で仕事をすることが多いんです。私自身は2003年から10年以上シンガポールに住んでエンタメ分野で仕事をしてきました。だから、ぜひ日本のエンタメコンテンツを広げるお手伝いをしたいと考えています。「宮野がシンガポールにいるから、アジアに出ていこう」というエンタメ業界の方ともっともっと一緒に仕事をしていきたい。
【やはりK-pop人気はすごい】
―宮野さんの経歴を教えてもらえますか。
もともと私は新卒で電通に入社しました。そして、トヨタさんの担当になり、海外で仕事をすることが多くなったんです。南アフリカなどずっと海外で仕事をする日々でした。シンガポールには2003年に赴任してきました。
シンガポールに赴任して日本企業のプロモーションをお手伝いして感じたのが、韓国企業の勢い。韓国企業は政府の後押しを得ながら、自国の映画や音楽などアジアで広めていました。アジアでの韓国の人気はすごいものがありましたね。
私はこれではまずいなと思いました。日本企業を売り込むなら、日本自体をもっとアピールしていかないといけないと危機感を持ったんです。そこで目を付けたのが日本のアニメでした。
そして、当時私の上司だった電通シンガポール支社長のアンソニーカン氏の強い意志と強力な推進力で先ほどのアニメフェスティバル・アジア(AFA)の開催に至ったわけです。
―日本企業を売り込むためには、まず日本自体を売り込む必要があったんですね。
そうですね。当時からシンガポールでもK-popはすごい人気でしたからね。その人気を背景に現代自動車やサムスンがアジア市場で攻勢をかけていました。私たちもトヨタさんを売り込むなら、同時に日本自体をアピールする必要があったんです。