
無添加化粧品という新ジャンルを切り拓いたファンケルの創業者、池森氏が代表に復帰して1年以上が経過した。経営改革に取り組む池森氏に、これまでの成果や今後の成長戦略などを聞いた。
※下記はIR通信vol.1(2014年8月22日発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
店舗スタッフの賃上げや ノルマ廃止などで売上向上
―昨年、代表取締役会長に復帰して以来、多くの改革に着手しています。どのような基準で打ち手を判断しているのですか。
将来性が見込めず赤字を垂れ流している事業や、本業から外れている業務はやめる。新規事業は本業を傷つけない範囲で投資する。こうした基準で判断しています。
また専門家にまかせるというスタンスを改めて、自分たちの頭で考えようと従業員に伝えています。昨年10月に銀座にある旗艦店を改装しましたが、当初は改装を社外の業者に全面的に委託しようとしていました。それでは従業員が育ちません。委託先に違約金を支払って、改装の企画からすべて従業員にやらせました。これは従業員教育だけでなく、コスト削減にもなり、コストは5分の1になりました。
―その一方、店舗スタッフのベースアップを実行しましたね。難しい判断ではありませんでしたか。
いいえ。私が2013年3月に復帰したとき、以前に比べて店舗スタッフの質の低下を感じ、給与を最大で月額2万円アップしました。安月給ではモチベーションが上がらず、いい人材も採用できません。スタッフには「自分を研鑽するために2万円を使ってください」と話しました。
店舗展開を始めた1990年代半ば当時は、ノルマを設けず、スタッフはお客さまのためだけを考えて働くように伝えていました。でも私が名誉会長に退いた後にノルマに近いような数字が設けられたため、店舗スタッフの離職率も上がっていたのです。そこでノルマを廃止して、2ヵ月間の研修を実施しました。すると、店舗スタッフも気持ちが安定して離職率が減少。売上も回復して、計画値を上回りました。
―人材育成についての考え方を聞かせてください。
会社づくりは人づくり。当社の業績を立て直すには、原点に立ち返り、従業員を根本から教育し直すしかありません。
そこで昨年6月、従業員の専門性を高め、お客さまに喜んでいただく環境を整えるために全従業員を対象とした「ファンケル大学」を設置し、教育の強化を図っています。受講した従業員たちは「すべての分野でイノベーションを起こし、ベンチャー精神とチャレンジ精神をファンケルの企業文化にする」という走るべき方向性をわかってくれた、という手応えを感じています。