
若手を登用したユニークなモデルとグロ-バルなコネクションを使い、新時代のベンチャーキャピタル(以下VC)として急成長を遂げているのがFenox Venture Capital(フェノックス ベンチャー キャピタル)だ。今回は共同代表パートナー&CEOのアニス・ウッザマン氏に、注目の分野や投資先の見極め方、日本のベンチャーが世界と戦うためのポイントを聞いた。
※下記はTech通信Vol.1(2014年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
ウエアラブルとヘルスケア分野に注目
―近年、シリコンバレーで注目されている分野はなんでしょう。
ここ最近のトレンドをみると、ウエアラブルテクノロジーはやはり元気がありますね。最先端のテクノロジーに対する投資意欲が盛んで、いま大きな注目を集めています。
またもうひとつは、ヘルスケアにかんする分野が新しいテーマになっています。たとえば、身体になにか不具合や表面上の疾患などが生じれば、それを簡易検査して具体的な対処法をアドバイスしてくれるサービス。健康管理にITを融合させる考え方が、次世代の最先端テクノロジーと融合して具現化されているのです。
当社としても、その2つの分野でサービスを展開しているスタートアップに注目しています。
8,000社のうち投資するのは10~15社
―御社はどのようにして投資先を決定しているのでしょう。
我々が投資先を決めるプロセスは、ものすごく厳しいです。当社では、毎日のようにイベントに参加して、投資を希望している会社のチェックを行います。年間8,000社をみたうえで、デューデリジェンス※の対象となるのは平均で380社くらいですね。
そこからまず、15~20名のメンバーが1週間にわたって同じ案件をみていき、チームミーティングで議論していきます。その際、86もの質問・チェック項目があり、それをクリアするとさらに前に進み、よりシニアのメンバーのチェックを受ける。さらにスタンフォード大学の教授やほかのベンチャーキャピタリスト、弁護士や会計士などのチェックを経て、最後に私が投資のサインをするのです。8,000社のうち、実際に投資するのは10~15社ですね。
―投資するかどうかを決めるポイントはなんですか。
「 テクノロジーがユニークかどうか」「トラックレコード(過去の実績)」「グローバル視点があるか」などいろいろポイントはありますが、一番重視しているのは社長を中心とした経営チームに「リーダーシップ」と「柔軟性」があるかどうかですね。
社長を尊敬して、ほかの若い人たちがサポートしていける組織であれば、リーダーシップがあるといってよいでしょう。そして、プロダクトをつくるプロセスにおいて「うまくいかないな」と思ったときに、方向性をすぐに変えることができるかどうか。これが柔軟性です。
当社の投資先でも、最初はバナナをつくるといってスタートしたのに、最終的にできたのはココナッツというようなケースはしょっちゅう。じつは我々からすれば、こうした方針をもつアントレプレナーが一番好ましいのです。時代の潮流を読み、あわないと判断したらすぐに方向性を変える。それが成功のカギを握る。あまりに自信家で、人の意見を聞かない頑固者では生き残ることができないでしょう。
投資先をじっくり見極める体制が整っている
―御社とほかのVCとの違いを教えてください。
当社は従来のVCとは違い、新しいカタチでデューデリジェンスを行っています。まず組織体制。従来のVCでは3~4名で運営しているところが多いですが、当社はシリコンバレー、インドネシア、韓国などに拠点があり50数名体制で運営しています。そのため、じっくりと投資先を見極めることができます。
そして、20代の優秀な若手が多いのも特徴。FacebookやGoogleをつくった人たちは、みんな20代でした。一般的な40代や50代のベンチャーキャピタリストでは、次のFacebookやGoogleを見つけるのは難しい。トレンドの視点が違うからです。だから当社は、「世の中にイノベーションを起こそう」という若手メンバーを集めています。彼らは当社の株をもっており、自社を成長させようというモチベーションも高い。だから、当社はスピーディーに規模が拡大しているのです。私はこの勢いを維持して、当社を世界トップのVCにしたいと思っています。