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JCグループ

東証一部上場企業で大企業向けに戦略コンサルティング、ベンチャー企業に対して投資事業を行い、同社で執行役員まで務めた髙氏。その髙氏がいま力を入れているのがカンボジアでの農業事業だ。なぜ髙氏がカンボジアで農業事業を行っているのか、カンボジアの魅力とは何なのかを同氏に聞いてみた。(取材内容は2014年3月時点のもの)


【日本の農業技術をカンボジアに】

―まず御社の事業内容を教えてください。

 農業事業の中では3つの事業があり、1つ目はお米の生産・販売・輸出。こちらは2009年から昨年まで、カンボジアを代表する穀倉地帯バッタンバン州で230haの土地を借りて、カンボジアのお米の生産・販売を行っていました。230haというと、東京ドーム約46個分ですね。お米の生産に関しては出張ベースで日本の農家の方をお呼びし、カンボジアの農家の方に対して農業指導をして頂き、カンボジアのお米の品質向上を担って頂いています。2014年の今年には同じくバッタンバン州で500haの農地で稲作を行う予定です。2013年秋からはカンボジア米の輸出も開始しました。まだ少量ですが、これまで7コンテナ約170トンをヨーロッパに輸出いたしました。

 2つ目はオクラの生産・販売です。当社は「カンボジアの中で、日本でいう農協のような存在」になりたいと考えています。日本の農協は農家に対して農業指導を行い、採れた農作物を買い取り、販売までしています。そういう存在を目指すべく、弊社が最初に選んだ農作物がオクラだったんです。今後もカンボジアの農家さんにとって収入アップにつながる農作物のタネを提供し、指導していき、つくってもらおうと考えています。

 3つ目は、バッタンバン州を中心に現地農家さんに対して農機のレンタル・販売を行っています。カンボジアでは最近まで農家さんは牛や耕運機を使って行っていましたが、現在では機械化が進んでいます。例えば、トラクター、コンバインなどです。主な取扱いは現在トラクターですが、農機を購入できるような富裕層の農家さんに対しては販売を、購入まではできない農家さんについては農機をレンタル貸出する形で、幅広い層の農家さんに農機を提供しています。レンタルの場合、ただトラクターだけを貸し出すのではなく、運転手つきで実際に農家さんの代わりに耕耘(こううん)する、いわば耕耘業務請負ですね。農機のレンタル・販売ともに、現在は主に日本製の農機を取り扱い、カンボジアの農家さんに日本製の農機を利用してもらっています。

【戦略コンサルタントからカンボジアで起業家になるまで】

―農業を手掛けているとのことですが、髙さんの起業の経緯を教えてもらえますか

 私は大学を卒業後、監査法人トーマツに入社し、そこで5年間公認会計士として会計監査業務を務めました。その後はドリームインキュベータに入社しました。ドリームインキュベータには7年間在籍し、大手企業の戦略コンサルや有望な日本のベンチャーに投資したり、ベンチャーの経営戦略から実行支援までをハンズオン型で行っていました。私が働いている間に、ドリームインキュベータ自身も上場を果たし、最終的には東証一部上場企業にまでなりました。一方で、担当させて頂いた投資先企業さまで、上場を果たされた方々もおられましたね。非常にやりがいのある仕事でしたし、職場でした。

 しかし、コンサルタントとして大手企業やベンチャーの経営者の近くで仕事をしていく中で、少しずつ自分の中で「いつか自分でも事業をやってみたい」と思うようになりました。そんなある時、大手企業のマレーシア進出のコンサルティングをする機会がありました。この時はじめて私自身アジアビジネスに関わりました。私は日本の高度経済成長を体感したことがない世代なので、アジアビジネスに触れて非常に刺激を受けました。アジアに行った際、国民が国全体が良くなると夢を共有しながら生きている姿を見て感動したんです。高度経済成長の日本も、当時はこんな勢いだったんだろうなと感じましたね。このマレーシア進出コンサルティングの仕事を通じて、アジアでビジネスしたいと本気で思うようになりました。

 その後、ドリームインキュベータでもアジアビジネスへの事業投資を模索しました。ベトナムでのベンチャー投資事業を立ち上げ、投資した現地証券会社が4ヶ月後に上場したり、面白い経験をたくさんさせて頂きましたが、やはり日本でも責任のある一部上場企業の執行役員の立場で、出張ベースでアジアビジネスを手がけることに限界も感じている中、カンボジアという国に出会い、そこで、これはもう自分で会社を興してやるしかないなと思い、会社を興すことを決めたんです。

―なぜカンボジアに進出することにしたんですか?

 当時、東南アジア諸国と日本を行き来している間にカンボジアの情報は常に入ってきました。2007年に初めてカンボジアに行ったとき、カンボジアという国にすごくチャンスを感じたんです。

 しかもカンボジアにはビジネスインフラが整っている割に、ベンチャー企業が少なかったので、いまなら自分が先駆者になれると思って、カンボジアに進出することを決めました。海外からのイメージと異なり、実際は外資規制や政治リスク、宗教リスクが少ないと感じたのも魅力的でしたね。