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【フィリピンの外資規制の対象業種】

―フィリピンでの外資規制について聞かせてください。御社の業種は外資規制の対象ですか?

フィリピンではオフショアの場合は100%外資で設立できます。たしかフィリピン以外からの売上が90%くらいある企業は100%外資での設立が可能だったかと思います。詳しくは専門家に聞いてもらえればと思います。ですので、弊社の場合は100%日系資本で設立できました。

しかし、オフショアなどの業種以外はネガティブリストに入っていて、かなり外資規制は厳しいみたいですね。特に小売り、飲食関係は外資の参入は厳しいようです。そしてよく聞くのが、乗っ取られるという話です。フィリピン人の奥さん名義で飲食店を開店して、その後に事業がうまくいったら離婚されてしまい、最後にはお店を乗っ取られてしまうという。

―なるほど。では、フィリピンで日本企業がビジネスするうえで、日本企業が失敗するパターンや成功するパターンについて教えてください。

実際に日本企業がフィリピンで事業をするのは楽ではないと思います。日本的経営をそのまま持ち込んでも成功しません。マネジメント方法が全然違うからです。

日本企業がフィリピンで失敗するケースで多いのが、日本流を推し進めてしまうケースですね。やはり郷に入れば郷に従えです。

フィリピンの会社では団結力が求められます。ちょうど日本の高度経済成長期のような感じでしょうか。「みんなで夢をもって成功しよう」みたいな熱ですね。だから、みんなが輪になってつながっているという意識が非常に大事なんです。弊社でも、クリスマスパーティーや社員旅行などのアクティビティには、非常に力を入れています。これがとても大事なんです。日本ではあまり社員旅行とか昔ほどやらなくなりましたよね。若い社員も積極的に参加したがらないと聞きます。フィリピンでは真逆なんです。

―なるほど。意外ですね。家族的経営なんですね。今の日本とは逆ですね。

弊社では他にも、社員の親御さんなどをお呼びして社内見学会やパーティーなども開催しています。また社内飲み会も積極的に促進し、飲み会代なども補助しています。フィリピン人は人と人とのつながりを非常に大事します。

【日系企業がフィリピンで失敗するパターン】

―日本企業がフィリピンで失敗するのは、マネジメントを現地化しないケースで起こったりするわけですね。

会社によってはフィリピン人と日本人を隔離して、お互いあまりコミュニケーションをとらないところもあるようです。これではうまくいきません。マネジメントするのは日本人だとしても、日々実際に仕事をするのはフィリピンの方々です。そのフィリピンの人たちと信頼関係をきちんと築かなければ、仕事はうまくいきません。

フィリピンでは日本人もフィリピン人もフラットな関係性がいいと思います。フラットな関係なうえで密度濃くコミュニケーションをとる。そこが大事です。ただ一つ気を付けないといけないのは、信頼関係は大事だけど“友達”になってはいけないということ。日本人の上司と仲良くすると、勘違いするフィリピン人の方も出てくるんです。自分が権力を持ったと勘違いしてしまうんですね。そこは一線をひかなければいけません。信頼関係は大事だけど、“友達”にはなってはいけない。甘えが出る。だから弊社では日本人マネージャーとフィリピン人スタッフが2人きりで飲みに行くのは禁止しています。逆に、グループで大勢で飲みに行くのは積極的に推奨しています。

―なるほど。そういうリスクもあるわけですね。

あとフィリピンの方は、まだまだスケジュール管理が日本と比べて甘い。だからスケジュール管理を逐一しないといけない。指示するときも曖昧にせずに、明確な指示を出す。いつまでに、何を、どうしてしなければいけないのかを丁寧に説明する。そうしないと納期までに仕事は終わりません。

またフィリピンの方に多いのが、できないことをできないと言わないパターン。YesがYesじゃないんです(笑)。不安そうにYesと答えるときは、だいたいYesじゃない。そこらへんもきちんとチェックしていかなければいけません。

【フィリピン人の性格について】

―もう少しフィリピンの人材についてお聞きしたいと思います。フィリピン人の方の日頃の仕事ぶりと言いますか、フィリピン人の方に対する御社の人材観について聞かせてください。

素直な人が多いと思いますよ。みんな非常に素直。教えたら教えた分だけ伸びる。人の意見も素直に受け入れる。そして、みんな明るくてフレンドリーですね。一緒に仕事をしていて楽しいですよ。

―御社ではフィリピン人の方の人材採用はどのようにしていますか?

弊社では優秀な人材を採用するために、いくつかの大学と提携しています。具体的には、大学にスポンサードしたり、学生が参加するプログラミングコンテストなどにスポンサードしています。そこで優秀な学生と接点を作って採用につなげています。将来は、弊社自身で学生向けのコンテストを主催したいとも考えています。

―育成についてはどうですか?

弊社ではトレーニングセンターを社内に設けて、2か月から6か月ほど研修を実施しています。基本的なスキルから始まって、すべて教えていますね。

また優秀な人材を採用して育成しても、定着しなければ意味がありません。定着してもらうために福利厚生にも力を入れています。たとえば社員食堂、フィリピンでは珍しいんですが、ランチを無料で出しています。またオフィスの立地にもこだわりました。ここのBonifacio(ボニファッシオ)という場所は、最近フィリピンで最も注目されている場所です。その他にも駅から会社まで無料のシャトル便を運行したり、入社した人にスマホを貸与(入社2年後には社員のものとなる)したりなどもしています。