
サービス開始から約2年で全世界のユーザー数が1億6,000万人を超えた。スマートフォン(以下、スマホ)向け無料通話・メールアプリ「LINE」はFacebookやTwitterを上回るスピードで普及している。運営会社はもともと韓国No.1インターネット企業の日本法人。しかし、「LINE」は日本のなかで企画・開発・運営されている純国産のITサービス。それが世界的成功をかちとった理由はなにか。代表の森川氏に聞いた。
※下記の記事は「ニッポンの社長」から転用した記事になります(http://www.nippon-shacho.com/interview/in_line/)
―サービス開始からユーザー数が1億人を突破するまで、わずか19ヵ月でした。「LINE」が支持されたのはなぜでしょう。
スマホ向けの最適化を徹底的に追求して開発したからです。パソコン(以下、PC)や携帯電話(以下、ケータイ)でヒットしたサービスをそのまま転用するのではなく、スマホに最適なサービスをつくることにこだわりました。
たとえば、IDによるログイン機能はつけていません。PCでもケータイでもID認証の必要なサービスは多い。たしかに、複数のユーザーが1台を共同で利用することが多いPCには必要かもしれません。でも、ケータイにそこまで厳重なセキュリティが必要なのか。ID認証が必要なケータイのアプリはユーザーから敬遠されているんです。だから、「LINE」にはつけなかった。電話番号だけで使えるんです。
また、ケータイによるメールでは、顔文字、絵文字、デコメールと、どんどんビジュアルによる表現が豊かになっていきました。ならば、画面が大きいスマホでは、より大きな絵を使ってメールを作成するだろうと。そこから、ユーモラスなキャラクターの絵で感情を伝える「スタンプ」というアイデアが生まれたんです。
―他社もスマホ向けサービスを提供しています。御社が抜きん出ることができた理由はなんですか。
ケータイ向けではヒットサービスを生み出せなかったのが、かえって幸いしたからです。
私たちはもともと、NHNJapanという「ハンゲーム」や検索サービス「NAVER」を提供する韓国企業の日本法人。ゲーム分野では、韓国で大ヒットしたオンラインゲームを日本市場向けにカスタマイズして、2000年から提供を始めました。
3年目から急激に業績が伸び、PCオンラインゲーム市場ではNo.1に。しかし、2005年ごろからケータイのソーシャルゲーム市場が伸びてきた。そこでケータイゲーム市場にも参入しましたが、グリーやDeNAほどには成長しませんでした。
一方、検索サービスでは、2007年にネイバージャパン株式会社を設立。2年後に「NAVER」を提供開始しましたが、すでに日本ではYahoo!やGoogleなどの検索サービスが圧倒的に強く、浸透していました。「NAVERまとめ」サービスはユーザーから支持されましたが、SNSとしての利用者数は伸び悩みました。
モバイルへ端末がシフトするのにうまく乗れなかったんです。でも、試行錯誤のなかでデザイナーやエンジニアなど優秀な人材が集まり、ノウハウを蓄積できた。そんなときスマホが登場。成長市場になると直感しました。
―どのように対応したのですか。
PCでもケータイでも、いちばんヒットしたサービスはメールをはじめとするコミュニケーションツールだった。そう分析して、「LINE」を開発するチームを立ち上げたのです。
PCやケータイ向けのサービスでヒット商品をもっていた他社は、それをスマホ向けに転用するところが多かった。でも、それでは使いにくかったり、スマホならではの機能が組みこまれていない。一方、私たちはゼロからスマホ向けサービスを開発した。だから、差をつけることができたんです。