
日本発のハンバーガーチェーンとして、多くの消費者の心をつかんできたモスバーガー。外食市場が縮小するなか、2014年3月期には大手ハンバーガーチェーンで唯一、増収増益を果たした。その秘密はどこにあるのか。1998年に創業者の櫻田慧氏から代表を受け継いだ櫻田厚氏に、独自の“モス流経営論”を聞いた。
※下記の記事は「ニッポンの社長」から転用した記事になります(http://www.nippon-shacho.com/interview/in_mos/)
―「モスバーガー」は1972年にカウンター5席の店から始まりました。いまや年商650億円を超える東証一部上場企業にまで成長した要因を教えてください。
まず1つめは、時代に恵まれたからです。従来の「飲食業」にシステム化やチェーン化といった要素が導入され、「外食産業」へと変化した時代の波に乗ることができました。最近の例でたとえるなら、ITベンチャーの波に近いかもしれません。
2つめは、ハンバーガーというアメリカの食べ物を日本流にアレンジしたこと。「テリヤキバーガー」や「ライスバーガー」といった、モスならではの独創的な商品が他社との差別化になりました。
3つめは、店舗戦略。外資系のファストフードチェーンが駅前の一等地を中心に展開する一方、当社は逆の発想をしました。顧客の流動性が少ない二等地や三等地で地域密着度を高め、地元住民に愛される店舗づくりをめざしたのです。資本力のある大手と同じ土俵に乗らないことで、独自のポジションを確立することができました。
―複数の成長要因のなかで最大のポイントはなんですか。
「モスバーガー共栄会」というFC加盟店の任意団体を組織化したことです。当時のフランチャイズシステムの概念から考えると、画期的な試みでした。
それまでは圧力団体になるという懸念から、オーナー同士の組織化を避けるのが一般的。ところが私の叔父である創業者の櫻田慧は「FCビジネスは人を信じることから始まる」と、あえてヨコのつながりをつくったのです。
そこから各オーナーは同志としての絆を結びながら、他店と切磋琢磨。サラリーマン店長ではなく、独立事業者だからこその強いエネルギーが生まれました。そして、この共栄会がベースとなって「チェーン店でありながら、チェーン店らしくない」というモスバーガーの特徴が形成されたのです。
―もう少しくわしく教えてください。
通常、チェーン店というのは標準化と画一化によって業務効率化をめざします。しかし、当社は店舗づくりをオーナーにゆだねて制約を少なくしてきました。仕組みやマニュアルはありますが、それ以上のことをできるのが人間。本部からの指示通りにやるよりも、自分で考えて結果を出すほうがモチベーションも上がります。
その結果、多くのお客さまから「モスの対応はマニュアル的じゃない」「まるで自分の家のように落ちつく」と評価をいただくように。こういった目に見えない価値、人間性がモスのブランドをつくってきたのです。