【シンガポールのハブ機能とは】
―シンガポール進出において、ハブとしてのメリットを教えてもらえますか?
シンガポールはアジアでビジネスをするうえでハブとして最適な場だと思います。アジアにおいて2か国以上でビジネスをする場合、ハブ機能は必要になります。特に複数国に進出するとなると必須ですね。
シンガポールのハブ機能は大きく分けて3つあります。1つ目は財務のハブ機能、2つ目は物流のハブ機能、3つ目が人材面についてです。1つ目の財務のハブ機能について説明したいと思います。イメージとしてはアジアの統括拠点としてホールディングスをシンガポールに設立して、次にアジア新興国に事業会社をつくり、シンガポールのホールディングスに各事業会社を連ねる感じです。そうすることで、各国で出た利益をシンガポールに効率的に集めることができます。シンガポールは政治が安定しており、経済状況も安定しています。急激なインフレにあうリスクも低く、利益を留保しておくのに最適な場所です。他のアジア新興国の中には10%近いインフレ率の国もあります。せっかく利益を出しても、そのまま現地の銀行に置いていれば10%ずつ目減りしていくので、シンガポールに資金を移すというわけです。
またアジア新興国の場合、海外への送金規制がある場合がありますが、シンガポールについては送金規制はありません。シンガポールから日本に送金するのは自由です。
そしてシンガポールの銀行は経営状態が健全です。たとえばベトナムやインドの銀行などでいうと、経営状態が脆弱でデフォルトリスクのある銀行も数多くあります。
次に物流のハブ機能についてですが、シンガポールの港湾や空港は非常によく整備されており、税関の能力も高い。よくアジア新興国では税関で無駄に足止めをくらったり、税関で止められて商品が届かないという問題が起こったりしますが、シンガポールでそういう話は聞いたことがありませんね。
最後に人材面についてですが、シンガポールには東南アジア各国から優秀な人材が集まってきます。各国の優秀な人材がキャリアアップのためにシンガポールにやって来るんです。シンガポールはそもそも給与水準が高いので、シンガポールに来て給与が何倍にもなったという話も聞きます。日本企業がアジアで事業展開するうえで、優秀な人材の確保は非常に重要な経営課題なので、この人材面のメリットは非常に大きいと思いますね。
―シンガポールでは年々ビザがおりにくくなっていると聞きます。
そうですね。ビザの取得は厳しい状況が続いていると思います。シンガポールの政策がシフトして、自国民を大事にしていこうという流れになってきているので、今後もこの流れは当面は変わらないと思います。しかし、日本人は他の国の人と比べてビザはおりやすいと聞きますよ。
ちなみにビザの発給の基準としては、まず給与額ですね。ここが一番大きなウエイトを占めます。月4500シンガポールドルあたりが目安だと思います。あとはその人の学歴、職歴、そして職位などのポジションですね。そういったことを総合評価されてビザは発給されます。
―ビザの問題で悩んでいる日本企業は多いですか?
そうですね。特に飲食店や美容室などのサービス業で進出している日本企業はビザのことで悩んでいる人は多いですね。シンガポーリアンを現地で採用したいと思っても、あまりシンガポーリアンはサービス業の現場で働きたがらないんです。だから現地の人を採用したくても採用できない。これはサービス業の人たちにとって死活問題ですよ。