―逆にカンボジア進出のデメリットは何ですか?
デメリットか分かりませんが、他のアセアン諸国より安易に進出しやすいという点だと思いますね。当たり前ですが、ちゃんと事前に市場調査をする必要があります。最近では外食などのサービス業がどんどん進出してきて競争過多になっている感がありますね。そもそも日本人はまだカンボジアにそんなにいません。せいぜい3000~4000人だと思います。つまり現地在住の日本人向けサービス市場はそんなに大きくないんです。しかし、だからと言って現地のカンボジア人すべてをターゲットにするとマーケットが大きくなりすぎ、資本がないと厳しい。そういった点を踏まえて、どの業種も事前調査をしっかりとしてから進出するべきだと思います。
【カンボジアで成功する日本企業、失敗する日本企業】
―カンボジアで成功している日本企業の共通点や逆に失敗する日本企業の共通点などは何かありますか?
まず成功している日本企業は、人を大事にしている企業だと思います。なんとかして儲けようという発想ではなく、人材育成を長期的スパンで考えて、まず社員に会社を好きになってもらうようにする。カンボジア人は人のつながりを特に大事にします。ですので、成功している日本企業は社員との人間関係をすごく大事にしていますね。こちらは正月だけでも3つあるんです。インターナショナルニューイヤー、中国正月、クメール正月の3つです。こういう正月などの行事も非常に大事にする。また社員の家族についてよく知ることです。どんな家族構成なのか。そして家族に困ったことがあれば積極的に助けてあげる。そういうことを続けて、カンボジア人の社員に会社のことを好きになってもらい、長期的な信頼関係を築いていくわけです。
また失敗する例として、日本のやり方をそのまま持ち込むというのがあります。たとえば日本では時間厳守はビジネスで当たり前ですが、カンボジアではそうではありません。厳しく時間を守るという習慣があまりない。だから、そこは辛抱強く時間をかけて教えていかなくてはいけません。なぜ時間を守らないといけないのかを納得するまで丁寧に何回も話すんです。
―カンボジアの人件費はどれくらいですか?
プノンペンだと日本語がしっかり話せるオフィスワーカーの大卒で月300米ドル以上ですね。エンジニアとなると数も少なくなるので、もっと高くなります。そもそもエンジニア志望で日本語を学んでいる学生はかなり少ないですから。
カンボジアでは縫製・製靴業労働者の最低賃金は80米ドルですが、手当を含めると実際には月100米ドル位です。また、今後も最低賃金は引き上げる傾向にあります。それでも隣国に比べると低い水準です。
―最後にカンボジア進出を検討している人にメッセージをください。
カンボジアは非常に魅力的な国なので、ぜひ進出を前向きに検討してもらえたら嬉しいです。親日国なので、進出を応援してくれる人は多いです。しかし、最後はやはり進出する方自身のポリシーが大事になってくると思います。
カンボジアは将来有望な国であることは間違いないですが、まだまだそんなに儲かる市場ではありません。ですので、そこは損得だけでなく、カンボジアを好きになれるか。この国の人たちと一緒に成長していきたいか。そういう気持ちがなければ続けていけないですし、成功することもできないと思います。
またカンボジアでビジネスをすると大変なこともあります。そういう時にこそ原点に立ち戻り、そんな困難も楽しみながら克服するような臨機応変さも時には大事だと思います。
ぜひ多くの日本企業がカンボジア進出に成功して、一緒にカンボジアの発展に貢献できればと願っています。
プロフィール
小川 靖浩(おがわ やすひろ)
1963年、神奈川県生まれ。オレゴン州立大学卒業後、住宅販売会社勤務を経て株式会社ワイキューブを設立。2011年6月に株式会社カケハシ スカイソリューションズ専務取締役に就任。2012年にはカンボジア首都プノンペンにてKAKEHASHI CONSULTING CO.,LTD.(カケハシ コンサルティング)を設立し、CEOに就任する。
企業情報
設立 | 2012年8月 |
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資本金 | US$70,000 |
事業内容 | 東南アジア(メコン経済圏)人材採用サービス、東南アジア(メコン経済圏)進出支援サービス、カンボジア学費支援プログラム |
URL | http://www.kakehashi-asia.com |
information
URL | http://www.kakehashi-asia.com |
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