日本人がフィリピン進出で成功するにはいまマニラでホットスポットとして注目を集めるBonifacio(ボニファッシオ)。ここにオフィスを構えるのが今回取材したKlab株式会社のフィリピン現地法人KLabCyscorpionsだ。同社は様々な人事施策によって、優秀なフィリピン人エンジニアを採用し育成することに成功している。今回は同社代表の野口氏に、主にフィリピンでのマネジメント手法について聞いてみた。(取材内容は2013年8月時点のもの)
【フィリピン現地法人の事業内容】
―まず御社の事業内容を教えてください。
弊社は東証一部上場企業であるKlabのフィリピン現地法人という形で、主にスマホ向けのゲームやアプリ開発をしています。現在、社員はフィリピン人と日本人合わせて160名くらいです。
―もともと野口さんがフィリピンで起業したCyscorpionsにKlabが出資して、今の会社になったと聞きました。
そうです。私は2007年にCyscorpionsをマニラのマカティで起業しました。当時の社員が20名ほど。日本から携帯コンテンツの開発案件などを受託していました。私が日本に帰国して営業をして開発案件を受注して、その開発をフィリピンでやっていたという感じです。
2010年に事業は黒字化したのですが、逆にそれが良くなかったのか、社内に緊張感がなくなった。しかし、私には危機感がありました。飯を食えるようになったけど、それでいいのかと。もっと成長しなければと思ったんです。
そんな時、Klabが日本で株式上場して、社長の真田さんが海外事業の展開を検討し始めていました。もともと私は学生時代からサイバードという会社で働いていた関係で、真田さんのことはよく知っていました。真田さんから「太郎、ぜひフィリピンで一緒に事業をやろう」と声をかけてくれました。そこで私もこれは更なる成長のための良い機会だと捉えて、Klabから出資を受けることに決めたのです。
【国際分業体制について】
―Klabグループの中で、フィリピン現地法人はどんな位置づけですか?
弊社は2つの役割を担っています。1つ目が日本のKlabのオフショア先という側面。現在、日本ではエンジニアのコストがかなり高くなり、また同時にアプリケーションのリッチ化が進み、日本でのゲーム開発のコストが大きな課題となっています。その開発コストを削減する目的ですね。
2つ目がグローバル向けのゲーム開発。Klabはアメリカにも子会社を持っています。アメリカでは北米や欧州向けゲームのマーケティングや企画を担っています。そして、そこで企画されたゲームを開発するのがフィリピンということです。
―なるほど。国際分業をしているわけですね。
そうですね。グローバル向けのゲームに関しては日本を通さずに、アメリカとフィリピンだけでやり取りしています。
【なぜフィリピンに進出したのか】
―話は変わるのですが、野口さんがフィリピンで起業しようと思った理由を教えてください?なぜフィリピンに進出することにしたんですか。
実はもともと私はオーストラリアで開発会社の立ち上げに参画していたんです。しかし、これがうまくいかなかった。オーストラリア経済の好調によりエンジニアの単価がどんどん上がっていたんです。
そこで目をつけたのがフィリピン。フィリピンは人件費が圧倒的に安かった。それにフィリピンは英語圏。そうした理由で、フィリピンに進出することにしました。
【フィリピンビジネスは無謀か!?】
―フィリピンでビジネスするのは無謀だという人もいます。
確かにいろんなリスクはあると思います。私もフィリピンに来た当初、日本人に紹介された現地人に保証金1000万円ほど持ち逃げされた、苦い経験もあります。
しかし、この国はチャンスが溢れています。最近の経済成長は本当にすごい。東南アジアの新興国の中では遅咲きかもしれませんが、ようやく遅れてきた春がやってきた感じです。
マニラでも最近ユニクロが出店して大盛況です。新しい飲食店が毎日の様にオープンしています。若い人たちの消費意欲が非常に高い。良いか悪いかは別として、みんなローンを組んでドンドン物を買う。若い人は不動産も積極的に購入しています。
―日系企業もフィリピンに進出ラッシュのようですね。
そうですね。まさにラッシュですね。
―フィリピンでビジネスにおいて成功している日本人はいますか?
たくさんいると思いますよ。たとえば私が知っている会社でいうと、在日フィリピン人向けのビジネスをしているIPSさん。CADのオフショアをしているオフショアCADさんなどですね。