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もっと欲張りにアジア(世の中)を 知ることで人生の選択肢は広がる

―学生は、どのような意識を持って参加されるのでしょうか。

 「より自分を磨きたい」「自分の人生の可能性を広げたい」という意識を持った学生が多いですね。「本当にやりたいことを探したい」「現状では力が及ばないので経験値や就活力を高めたい」という課題を持った学生が集まってきます。また、明確な目標があっても、1人で到達できるイメージが持てず、必要なマインド、人脈、スキルを身に着けるために参加する学生もいます。参加費は親に頼らず、自己投資と考え、自分で工面する学生も少なくありません。

―海外インターンも『GBA』の一環として行っているのですか。

 当社は、シンガポールで行う短期インターンシップにも力を入れていますが、『GBA』とは別に参加者を募ります。まず、国内1ヶ月間でビジネスの基礎を学び、現地では市場調査を行ったり、そこで活躍する起業家のプレゼンを聞いたり、自分たちで考えたビジネスプランをプレゼンしたり、チームビルディングの手法を学んだりします。シンガポールはたった50年で日本のGDPを超えるほどの急成長を遂げた国であり、そこで出会う文化やビジネスは学生たちに大きな刺激を与えてくれます。

 このインターンシップを一言で表すなら、人間力育成プログラムですね。インターンシップ最終日には、ほぼすべての参加者がシンガポールの観光名所・マーライオンの前で涙を流してしまうほど本気度が高く情熱的です。就職では経験がものを言うので、一生語れる経験を積ませたいと考えています。現在(2016年2月)まで3年間で8回開催し、約200名の学生に参加してもらいました。おかげさまで、最近は全国から応募が来る他、企業からの協賛を得られるなど広く認知される存在になりました。

―起業の経緯をお話し下さい。

 私は大学卒業後、人事コンサルティングを手掛ける株式会社リンクアンドモチベーションに入社しました。リクルートさんなどの大手企業からの内定を辞退し、日本をモチベーションという切り口から元気にしたいとの志を持って同社を選択。中小・中堅企業様の採用支援に携わらせていただき、リクルーターや面接官として多くの学生たちとも接してきました。

 学生たちや人事関係者と日々接する中で、1つの社会的な問題意識を持つようになりました。それは、「採用支援の会社は世の中に数多く存在しても、就活生に本気で寄り添って支援する会社はほとんど存在しない」ということです。大卒者の生涯賃金は3~5億円と言われており、その基礎を作り上げるファーストキャリアでどの会社を選ぶかは、彼・彼女の人生を決めるといっても過言ではありません。その意味でも、就職活動は本当に重要なのです。

 しかし、就職活動にむけた準備がキチンとできている学生は非常に少ない。なぜそうなるのか…単純な話で、彼・彼女たちを適切・的確に指導する人間がいないからです。それは本来、大学のキャリアセンターが担うべき仕事ですが、そこにグローバル時代に相応しいキャリア教育を、実体験に基づいて指導出来る人材はいません。面接官として学生と接する中で人生相談に乗るなど、学生と1対1で信頼関係を作ることに生きがい、やりがいを感じていた私は、その受け皿がないことに気づいてしまった以上、自分でやるしかないと考えるようになりました。

 30歳までに起業したいと考えていた私は、3年でリンクアンドモチベーションを退職し、その後、知り合いの資産管理会社で代表を務めました。そこでシンガポールや香港などアジアの国を訪れ、大きな刺激を受けました。尊敬する経営者の先輩から「これからはアジアの時代」と聞かされていたこともあり、アジア10ヶ国を訪れる中での人や環境との出会いに感動と刺激を受け、アジア×就活を切り口に再度起業することを覚悟しました。

―上田さんは現在の学生をどのように捉えていますか。

 日本の学生は視野が狭いと感じます。もっと欲張りに色々なことを知って欲しいと思います。知っていれば選択肢が広がります。こんな生き方もあるし、あんな生き方もあると。他の国の学生は生まれ育った国だけではなく、どの国で働いても良いと考えています。アジアの中でも成長著しいシンガポールに連れて行くのは、学生の視野を広げるためでもあるんです。

 私はどんな学生でも磨けば光ると考えています。現時点を評価するのではなく、学生の可能性を信じて、泥臭く長く付き合うことが大切です。採用に関して言えば、寄り添って育成するという観点が欠けていると感じることが少なくありません。育成する観点さえあればどんな人間でも光るものです。