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アイ・シー・ネット株式会社

20 年間で100ヶ国に渡るODAプロジェクトのコンサルティング事業を手掛けてきたアイ・シー・ネット株式会社。国際開発援助のリーディングカンパニーである同社が、この20 年で築き上げたノウハウやネットワークは絶大で、他に類を見ない。そんな同社が近年、これらのネットワークを存分に活用する形で、民間企業の海外進出をゼロから支援する事業を開始した。「開発途上国で日本企業に求められている役割とは何か」「日本企業が途上国へ進出するメリット・デメリットは何か」日本企業と開発途上国を繋ぎ、双方の活性化を目指す代表取締役社長の多田氏に余すことなく聞いた。


―まず御社の事業内容を教えてください。

 当社の売上8割を占める基幹事業が、ODAコンサルティング事業です。具体的には、JICA(国際協力機構)・政府機関・世界銀行などから予算を預かり、開発途上国の教育・保健・ガバナンスなどの開発プロジェクトを進めています。教育分野や保健分野の制度構築や専門人材の育成など、10の専門分野(教育・農業・保健・ガバナンス・評価・水産・産業開発・観光・環境・復興支援)において、過去20年間で実施した事業は100ヶ国にのぼります。

 ODA支援の他にも、海外で活躍する人財に教育するための「グローバル人材育成事業」や、途上国で事業を立ち上げる起業家に投資を行う「ビジネスインキュベーション事業」などを展開しています。ビジネスインキュベーション事業では経産省からも補助金をいただき、日本企業11社の海外への新規事業展開を支援したり、自社のビジネスアイデアコンテストで集まった事業に投資を実施したりしてきました。

―近年、民間企業の海外進出支援も始められたとお聞きしました。

 はい。最近、当社が特に力を入れているのが日本企業の海外進出を支援する「グローバルビジネス支援事業」です。私たちはアジア・アフリカ・アメリカなど100ヶ国において、自分たちの頭と身体に汗をかきながら、ODAのための市場調査~戦略策定~プロジェクト運営を実施してきました。そのため、世界各国で事業立ち上げを経験した人財・ノウハウが当社内に蓄積されていますし、ODAプロジェクトで運命を共にした現地パートナー達も各国に点在しています。他に類を見ない当社のこの強みこそ、日本企業が海外進出する時に上手に活用してもらうべきではと考えたのです。

―具体的にどのような支援をされているのでしょうか。

 海外進出前のご相談から始まり、市場調査・戦略策定・現地パートナー探し・会社設立手続き・人材育成・進出後の実務サポートまで、どんな課題やご要望でもお応えすることが可能です。なお、進出国を検討されている段階でご相談いただくのが、当社の強みを一番活かせるかと思います。

 例えば、「この商品をタイで販売するため、現地ニーズを調べたい」と相談された時、「タイでは飽和状態のため価格競争になりそうだが、ラオスなら未開拓のために参入の余地あり」と提案することがあります。これは、当社が特定の国に対するコンサルティングを行っている訳ではなく、あらゆる国々のデータベースや経験値から物事を判断することができるためです。また、ODA支援の関係上、中心都市だけでなく地方都市でのプロジェクトも数多く運営しているため、都心部以外でのニーズを探ることができるのも特徴です。タイであれば「バンコクよりもチェンマイやスコータイの方が成功する確率が高いかも知れない」といった形です。

 つまり、私たちはクライアントが海外進出する根本的な理由である売上拡大や技術移転に注目し、同社が進出するのに最も適したエリアの選定から、成功するための戦略策定、場合によっては進出後の実務サポートまで展開しているのです。

―なるほど、御社ならではの強みですね。クライアントはどのような業種・規模が多いのですか。

 業種はレストラン・メーカー・テレビ制作会社など、本当に様々です。どのような業種でも、比較的柔軟に対処できますね。大企業のクライアントもおりますが、私たちのサービスを受けることで加速度的に成長するのは、やはり中小企業です。そのため、当社自身も短期的な報酬利益に固執するのではなく、その事業が将来的に拡大するポテンシャルがあるかを重視し、お手伝いさせて頂いています。日本企業の技術やサービスを必要としている国々はたくさんあります。そのため、海外進出を目指す日本企業には、どんな小さなご相談でもまずは無料でお受けするようにしています。 

―御社は海外の現地企業からもコンサルティングの依頼を受けていますよね。

 はい。日本企業だけでなく、当社のサポートを必要として下さる海外企業にも支援範囲を広げています。日本企業と同様、他国でのビジネス支援をする場合もございますし、「ある特定分野の技術を持っている日本企業を紹介して欲しい」とマッチングを依頼されるケースも少なくありません。現在も、カザフスタンの現地企業から企業紹介の要請を受けている最中です。今後は、海外からの日本進出にも力を入れたいと思っています。

―現時点で御社の海外拠点はどれくらいあるのでしょうか。 

 駐在員事務所なども含めると、タイ・カンボジア・バングラデシュなどの8エリアに自社拠点を構えています。5年後には15拠点まで増やしたいですね。なお、当社が拠点を構えている国々では、独立採算性で実業を展開しています。たとえば、カンボジアでは音楽学校、ラオスではホテルとスーパーマーケットの経営など。もちろん自社拠点の強みを活かした日本企業のコンサルティングにも力を入れていますが、私たち自身も現地で投資を行い、ビジネスを立ち上げ、経営をしているのです。だからこそ、コンサルティング事業において、机上の空論ではなく、リアリティのある支援を実現できるのだと思っています。