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ポスト・リンテル株式会社

創業期から参画した不動産ディベロッパーを、ナンバー2の立場で株式上場へと導いた坂東氏。不動産のプロフェッショナルとして、バイタリティあふれる手腕で同社を成長ステージへと押し上げたあとに独立。2017年にポスト・リンテル株式会社を設立した。アジアの富裕層向けに日本の投資用不動産を提供するビジネスで成長を遂げ、同社はいま、新たなフェーズへと歩みを進めている。市場から確かな信頼を獲得し、さらなる事業成長を目指す同氏に、ビジネスに賭ける想いを聞いた。


―事業内容を教えてください。

 アジア圏を中心とした、REIT(不動産投資信託)や私募ファンドといった海外の投資家向けに、日本国内の投資用不動産の提案を行っています。提案内容としては、商業不動産の投資コンサルティング、運営管理、開発後を見据えた事業コンサルティング、土地開発・建設から行う場合のプロジェクトマネジメントまで幅広く、取扱件数の8割以上は中国、香港、台湾といった海外の顧客を相手にしたクロスボーダー取引が占めています。
 私は前職の不動産会社で海外事業を担当し、10ヵ国以上の顧客と取引をしてきて、「日本の不動産は世界的に見て相対価値が非常に高いこと」と「クロスボーダー取引をコンサルティングできる事業者が少ないこと」を知りました。数百億円以上の大型物件を手がける大手事業者や、数千万円の小型物件を手がける個人事業主はいるものの、10~30億円の中間領域を担う事業者はとても少ないことに気付き、そこに事業の可能性を見出して成長してきたのです。

―近年、顧客層に動きや変化はありますか。

 以前は、主なお客さまとして私募ファンドや事業会社の経営者が多かったのですが、今は保険会社やREITといった機関投資家のほうにシフトしている傾向が見られます。特にコロナ禍以降のこの1年で、そうした流れが加速しているように思いますね。
 たとえば、1,000億円以上の資産運用規模をもつ機関投資家が、投資先を探すなかで日本の不動産に注目し、当社にコンタクトを取る例が増えています。当社におけるアジア圏の海外ファンドや投資家との実績を見て、「50億円程度の物件でも検討したい」という問い合わせが増えてきているといったカタチです。そうした市況もあり、当社の売上は近年大きく伸びており、本格的な成長フェーズにあるということが言えます。

―そうした成長の要因はなんでしょう。

 ひとつは、売主でもある日本の不動産会社さんの信頼を得たことによって、良い物件が仕入れられるようになったことが挙げられます。
 設立当初は、金額的には好条件でも、「海外の顧客には売りたくない」と抵抗感をもつ売主も少なくありませんでした。そこから丁寧にコミュニケーションをとっていきながら、売主との人間関係を地道につくって信頼関係を構築した結果、「ポスト・リンテルが間に入るのであれば、海外のお客さんでもいいよ」と言ってもらえるようになったのです。財閥系の不動産会社が所有するような大型の優良物件を回してもらえるようになったことは、当社が成長していくうえで非常に大きな要素になったと言えます。

―なぜ、そうした信頼感を得られたのでしょうか。

 何も特別なことはしていません。信頼は決してお金では買えないし、一つひとつの取引を丁寧に、誠意を尽くすなかで積み上げていくしかありませんから。お客さまへの対応の仕方によってそうした気持ちを少しずつ感じてもらいながら、コツコツと積み上げていったということに尽きます。
 私たちのような小さな会社は、たとえばAIやIT技術に強みがあるわけではありません。大事なのは人と人との信頼関係であり、想いや誠実さをいかに売主に理解してもらえるか、ということが最も大きいのです。そうやって良い物件を任せてもらえるようになれば、もともと海外の顧客とのパイプの太さは当社の強みですから、売主にも満足してもらえる取引ができるようになり、さらなる信頼となって積み上がっていきました。